「犬たちの明治維新 ポチの誕生」仁科邦男氏

公開日: 更新日:

 吉田松陰の黒船密航を阻んだ者。ペリー艦隊が帰国時に乗船させた者。西南戦争で西郷隆盛と共に出陣した者。これ、すべて人ではなく“犬”である。幕末・明治維新をテーマにした本は無数にあるが、犬を切り口に丹念にひもといた本はそうそうない。

「常識とされている史実も、根本的に間違っているんじゃないかと疑問を持ってしまうんですよね。多くの学者が研究し尽くしているものほど、根拠が曖昧だったりもします。そもそも犬なんてものは歴史学の対象ではないし、民俗学でも断片的にしか出てこない。でも日記や随筆のほか郷土史料などを掘り起こすと、犬がきっかけで新事実が見えてくることもあるんです」

 なぜ犬を切り口に選んだのか。しかも日本中どこにでもいた、ありふれた名もなき犬たちを。

「最初は猫の歴史を調べていたんです。でも猫は化けたり、たたったりのフィクションが多すぎて行き詰まった(笑い)。有名な鍋島の猫騒動だって、明治時代の講釈師の作り話ですからね。犬の歴史に興味を持ち始めたのは40年前くらいかな。江戸名物が『伊勢屋、稲荷に犬の糞』という川柳に疑問を感じたんですよ。本当に江戸ではやったのか? と。明確に覚えていませんが原点はそこかもしれません」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い