「奏弾室」仁木英之著
子供のころ、ピアノのレッスンで「心がこもっていない」と叱られて、音がわからなくなってしまった秋葉佑介。近くの谷津塚山の遊歩道を散歩していたら、ピアノの音が聞こえてきた。まるで呼ばれているように歩いていくと古い洋館があり、「奏弾室」というプレートがかかっている。
そこは松田沙良という女性が教えている音楽教室で、やってきた生徒の益田が練習を始めた。その演奏は沙良より下手なのに、佑介は涙が止まらなくなった。益田は娘の結婚式にピアノを弾くので、佑介に譜めくりをやってほしいという。ところが、結婚式の日、新郎新婦の姿はなかった。(第1話)
ピアノをめぐるミステリアスなファンタジー7編。
(徳間書店 1600円+税)