「生き残り」古処誠二著
北ビルマの林の中を白方見習士官が率いる分進隊は進んでいた。白方以外の5人はビルマ腐れ(熱帯潰瘍)に侵された独歩患者で、本隊から切り離され、マンダレーを目指していた。イラワジ川をイカダで下っているとき、森川上等兵は双発機が1機飛んできたのに気づく。川に飛び込んで中州まで泳げと命令され、照明弾の投下と機銃掃射をかいくぐって4人が生き延びたが、朝永伍長は死体となって発見された。
翌朝、白方が全員に伍長の死体の刺し傷を見せた。白方は刺殺だとみたが、阿木原兵長は自決だと言う。だが、阿木原は、2人きりの時に森川に「おまえが殺したのか」と尋ねた。
退路を断たれた過酷な逃避行の中で起きた事件を描く戦場ミステリー。
(KADOKAWA 1600円+税)