「想い人」諸田玲子著

公開日: 更新日:

 主人公は、天保9年の大火で、女房のお袖が行方知れずになった過去を持つ瓢六。

 一時は生きる気力さえ失っていたものの、8年の歳月を経てどうにか表面上は昔に戻ったかのような生活を送っていた。

 そんなある日、借家があった小出家という旗本の家に火事が出た余波で、小出家が引っ越すことになり、瓢六も住まいを新しく探さなければいけなくなった。どこに引っ越そうかと迷っていたとき、耳にしたのは「梅の木を眺めているお袖そっくりの女を見た」という話。

 昔のことは忘れて、憧れの人となった武家の娘・奈緒のことでも考えながら暮らそうと決めていたのに、結局お袖と暮らしていた冬木町に引っ越してくることになったのだが……。

 本書は、元悪党ながら頭の切れる色男・瓢六の人生を描いた人気の「瓢六シリーズ」第6弾。

 亡くなったと思っていた妻と似た女の出現で心を揺らす瓢六の物語を軸として、人が人を思う気持ちの切なさと喜びを温かな視線で描いている。

(文藝春秋 1550円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    嵐ラストで「500億円ボロ儲け」でも“びた一文払われない”性被害者も…藤島ジュリー景子氏に問われる責任問題

  2. 2

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  3. 3

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  4. 4

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  5. 5

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  1. 6

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  2. 7

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール

  3. 8

    織田裕二「踊る大捜査線」復活までのドタバタ劇…ようやく製作発表も、公開が2年後になったワケ

  4. 9

    「嵐」が2019年以来の大トリか…放送開始100年「NHK紅白歌合戦」めぐる“ライバルグループ”の名前

  5. 10

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞