「森家の討ち入り」諸田玲子著

公開日: 更新日:

 赤穂四十七士の討ち入りは、主君の無念を晴らす行いとして称賛されてきた。しかし47人のうち、神崎与五郎、横川勘平、茅野和助の3人は、赤穂の隣国・津山森家の旧臣で、討ち入りの少し前に赤穂藩に召し抱えられた新参者だった。3人は共に、生類憐みの令に基づいて10万余匹の野犬を収容するため、江戸郊外中野村に築造された御犬小屋の建設に従事していた。

 御犬小屋築造の総奉行に任じられたのが津山藩2代藩主森長継の十二男、森衆利だった。その後、衆利は5代藩主となったが、幕府への継承挨拶へ向かう途中発狂したため、津山藩は改易となってしまう。藩を失った神崎らは、赤穂藩に移籍したのだ。

 討ち入り前に、離縁した妻に別れの挨拶をする与五郎、瀕死の重傷を負った自分を親身に看病してくれた娘に淡い思いを寄せる和助、間諜として敵方に忍び込んでいる幼馴染みとの悲恋を貫く勘平――それぞれの恋模様を描きながら、彼らにとっての討ち入りの大義とは何だったのかを問う、もうひとつの忠臣蔵。

(講談社 1450円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性