「帝王の誤算」鷹匠裕著
倉澤真美の夫は日本最大の広告代理店「連広」に勤めていたが、同社には過酷な働き方を強いる「十の掟」があり、夫も連日の無理がたたり過労死してしまう。残された真美は、夫の上司・城田常務の秘書として連広に中途採用される。城田は順調に出世街道を上ってきており、「十の掟」を信奉する強面役員として社員から恐れられていた。
時はバブル前夜。広告業界も大きな変わり目を迎えていた。
自動車メーカーの最大手トモダの広告をめぐる業界2位の弘朋社との熾烈な争い、有力政治家を巻き込んでの都知事選への関与、アマチュア規定を覆して有名スポーツ選手をCMに登場させる「がんばれ! ニッポン」キャンペーンなど、城田はその剛腕ぶりを発揮して、ついに社長の座を射止める……。
広告業界に身を置いていた著者だけに、バブル期から今世紀初頭における広告業界の狂奔ぶりが、実にリアルに描かれる。過労死を生むに至った会社にとって、一体何が「誤算」だったのかを、鋭く問いかけてくる。
(KADOKAWA 1700円+税)