トランプ・リスク

公開日: 更新日:

「トランプ貿易戦争」木内登英著

 米中間選挙で「大勝利」とうそぶいたトランプ。しかしその足元には経済リスクの暗穴が大きく口を開けている。



「俺はビジネスマンだ!」と豪語するトランプ。外交の常識を破って大統領自らが「貿易戦争」を口にする今日、一体なにが起こるのか。本書は野村総研のベテランエコノミストが分析するトランプ経済のリスク。

 まず政権1年目の実績は「予想外に穏健」だったと著者は見る。しかし今年に入ってにわかに保護主義的姿勢を強化。背景は政治情勢。

「選挙」や自身への「追及」などが起こるたびに中・欧を敵視し、日本まで恫喝(どうかつ)するのだからたまったものじゃない。しかもトランプは大型減税に加えて大型インフラ投資も行うという、貿易赤字必至の矛盾した政策を平気で実施する。

 政権の抱える双子の赤字リスクはレーガン政権期より大きいのだ。ベテランらしく歴史も視野に入れながらの手堅い解説が持ち味。

(日本経済新聞出版社 1800円+税)

「アメリカ経済の終焉」若林栄四著

 株価は絶好調、ナスダックも堅調の米経済だが、だからといって当分コケることはないというのは「歴史を無視した楽観論」だと本書は冒頭からバッサリ。米中央銀行(FRB)は短期金利をコントロールできても、長期金利は市場が決める。著者は長期金利は上がらないとし、ITバブルとリーマン・ショック以来、FRBはデフレに対抗すべく量的金融緩和策を乱発してすっかり信用をなくしたと指摘する。

 日本の都市銀行から在米日系証券会社の執行副社長をつとめ、今は在米のファイナンシャルコンサルタント。生き馬の目を抜くアメリカ経済と金融の最前線でわたりあってきた人の指摘だけに説得力がある。

「脅しと駆け引きだけ」が得意で「深い考えなどこれっぽっちもない」トランプの下、米経済はいよいよ破綻寸前なのだ。

(集英社 1500円+税)

「『トランプ暴落』前夜」副島隆彦著

 今、米経済は「嵐の前の静けさ」だと著者はいう。年内は株価も金融市場も「大きくは崩れない」。崩れは来年1月から。それでもまだ大暴落ではない。20年が大統領選挙、危ないのはその翌年、21年。

「今から6年後の2024年に、株価が大暴落を起こして、世界は大恐慌に突入するだろう。その年に、日本でも預金封鎖が断行される」と明言するのだ。

 在野のユニークな評論家として外交・安保・経済に直言する著者としても相当にストレートな予言だ。元凶は米欧日の政府がひそかに積み上げた財政赤字(政府債務)と、それを無制限に国債引き受けしてきた各国中銀の「毒まんじゅう」政策。経済論壇で最も厳しい黒田日銀批判は読んでいて怖くなるほどだ。

(祥伝社 1600円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景