ポスト・ネット時代

公開日: 更新日:

「〈インターネット〉の次に来るもの」ケヴィン・ケリー著 服部桂訳

 いまや「ネット」だけで通じるインターネット。その「次」はどうなるのか。



 かつてS・ジョブズも大きな影響を受けたことで知られる伝説の本「ホール・アース・カタログ」。その共同企画者で雑誌「ワイヤード」の創刊編集長だった著者。まさにネット時代の黎明(れいめい)期からその可能性と未来を信じてきた第一人者が語るネット社会の未来論だ。

 SNSによる流言飛語など最近は弊害が強く意識されるネットだが、著者はあくまでポジティブに未来を信じる。ネットが人類の目の前に開いてみせたテクノロジーは、単に人間がつくり出した人工的な技術にとどまらず、宇宙の普遍的な原理そのものを示しているとまでいう。80年代の初め、モデムでつないだ電話線の向こうに広大無辺の空間が開けていると感じたときの興奮が、いまなお脳裏に息づいているのがわかる。

 60代半ばを過ぎてもバーチャルリアリティーのビューアーをつけて何時間でも過ごせるという若々しい好奇心。筋金入りのユーザーだけにこれほどの確信をもってネットの楽天的な未来を語れるのだろう。

(NHK出版 2000円+税)

「ポストメディア人類学に向けて」ピエール・レヴィ著 米山優ほか訳

 インターネットの初期には、この新しい技術が人類に未知の扉を開くものと期待する声が高かった。本書もそのひとつだが、単なる夢想や甘い期待の本ではない。

 ネットは市場を流動化させたり、グローバル経済の勝ち組を生んだりするだけでなく、国家や場所に固定されない「脱領土化された市民性」の可能性を秘めていると主張する。

 既存の秩序にしばられない共生・共存はいかにして実現されるのか。「メディアはメッセージ」と看破したマクルーハン以来の斬新なメディア論。

(水声社 4000円+税)

「インスタグラムと現代視覚文化論」久保田晃弘 きりとりめでる共訳・編著

 人気低迷のフェイスブックに代わっていまや時代の寵児(ちょうじ)はインスタグラム。「インスタ映え」は小学生でも知る流行語だ。

 このインスタグラムにいち早く注目して美学論を展開したのがロシア出身のデジタル理論家でアーティストのレフ・マノヴィッチ。

 本書は彼がネット上に公開したインスタ論を全訳し、編著者をふくむ多数の論文で解説や独自の分析を試みたユニークなメディア論。

 訳書部分を横書き、論文を縦書きという大胆な本のつくりなど雑誌の特集の機動性が特徴。インスタの世界ではプロもアマも同じように「いいね!」を求めて競争しているという指摘が面白い。

(ビー・エヌ・エヌ新社 3500円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  3. 3

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  4. 4

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  5. 5

    坂口健太郎に永野芽郁との「過去の交際」発覚…“好感度俳優”イメージダウン避けられず

  1. 6

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  2. 7

    板野友美からますます遠ざかる“野球選手の良妻”イメージ…豪華自宅とセレブ妻ぶり猛烈アピール

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景