公開日: 更新日:

「情報戦争を生き抜く」津田大介著

 米特別検察官の捜査で、フェイクニュースが武器になる新たな戦争の時代が明らかになった。

「ローマ法王はトランプ支持」「ヒラリーはISに武器を売却」「FBI長官はクリントン財団から数億円を受け取っている」
 これらは2016年の米大統領選でフェイスブックの上位表示に並んだフェイクニュースだという。実はその前、上位のニュース表示はすべて機械による自動判別といわれていたのが、実は人の手を介した「重み付け」をしていたことが内部暴露で発覚し、保守派からの非難が殺到。そこで担当者を全員解雇して機械判別にしたところ、これらのフェイク情報がたちまち上位になったというのだ。
 ソーシャルメディア時代の初期からネットの世界をウオッチしてきた著者は現代を「虚偽情報に汚染された時代」と呼ぶ。専門の研究者によるとフェイクニュースに踊らされた読者は少数。しかし別の専門家によるとクリントン陣営からの流出メールを使ったロシアのプロパガンダが接戦州の投票に明らかに影響を与えたという。まさに情報は戦争の武器なのだ。(朝日新聞出版 910円+税)

「フェイクニュース」一田和樹著

 フェイクニュースはいまや単なる「捏造(ねつぞう)報道」「ニセニュース」ではない。いまや戦争兵器としての重要性を増しているという著者は、IT企業の元重役で作家。独自の調査に基づいて新たな戦争の実態を探る。それが通常の兵器や戦略とフェイクニュースを組み合わせた「ハイブリッド戦」だ。
 クリントン陣営のハッキング事件からマケドニアに設けられたニセ情報を発信する偽造サイトの詳細まで、この数年で急拡大したフェイクの世界をあらわにする。
(KADOKAWA 840円+税)

「情報と戦争」ジョン・キーガン著 並木均訳

 古代からナポレオン戦争、南北戦争、2度の世界大戦、現代まで、情報(インテリジェンス)を制した者こそが勝利を手にした。その歴史を世界的に著名なイギリスの戦史家がたどったのが本書だ。
 世界史の大きな視野のなかで、戦時中の日本海軍がミッドウェーで犯した情報戦の致命的なミスの重大さが改めてよくわかる。ただし、情報はあくまで2次的要素。本物の力と組み合わさって初めて情報の威力も生まれると指摘する。
(中央公論新社 3800円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い