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「生命科学の未来」本庶佑著

 免疫学者・本庶博士のノーベル賞受賞でにわかに注目を集めるのが「免疫」だ。



 ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶博士。歯に衣着せぬ直言で知られる氏の過去の2つの講演会の記録と対談を収めたのが本書だ。

 講演の骨子は長年にわたる研究生活の回顧。博士の功績は活性化T細胞の表面に発現する受容体「PD―1」分子を発見し、これを抑えることによって免疫を活性化させ、がんの治療に役立てる道を開いたこと。これによって日米欧でメラノーマ、難治性非小細胞性肺がん、難治性腎がんなどへの薬剤承認が下り、多くのがん患者が救える状態となった。

 しかし1992年にPD―1を発見し、これを新薬開発へとつなぐ可能性が出たとき、博士が所属する京都大学は特許を取得する体制も金もなく、製薬会社と組むことを勧めたという。これに対して米国の医薬ベンチャーはきわめて積極的だった。今回、博士は製薬会社にも呼びかけ、ノーベル賞の賞金とがん治療薬「オプジーボ」の利益の一部を合わせた基金を設立。これを若手研究者支援に役立てるという。軍事費に巨額を投じる安倍政権にも見習ってもらいたいものだ。

(藤原書店 2200円+税)

「免疫と『病』の科学」宮坂昌之、定岡恵著

 免疫ブームで免疫は万能と思い込む人も少なくない。だが、免疫反応はアレルギーなども引き起こすし、自己免疫疾患で関節リウマチなど自分自身の組織に対して免疫反応が起こることもある。

 なかでも危険なのが慢性炎症。免疫反応は炎症反応によって始まるが、ふつうは一過性の炎症が長引き、体内のブレーキ機構などが破綻してドミノ倒し的な連続現象が起こるのが慢性炎症。これが進行するとがんや糖尿病動脈硬化、アルツハイマーなどにつながるのだ。

 本書は炎症と免疫を解説し、近年医学界で注目されている慢性炎症についてわかりやすく説明してくれる入門書。「サイレントキラー」の異名を持つ慢性炎症を知るよい機会だ。

(講談社 1100円+税)

「美しき免疫の力」ダニエル・M・デイヴィス著 久保尚子訳

 少し前までの医療や服薬のイメージは、ペニシリンのように病原体を直接死滅させるものだったが、いまは免疫システム、つまり人間の体が本来持つ力を促進するものに変わっている。本書は人間の体は「ネットワーク」だという。免疫系はまさにこのネットワークを動的に活性化させるものなのだ。

 この免疫系活性化の薬効を新しくデザインする技術が現代の免疫学。本書は英マンチェスター大の免疫学教授が基礎から解説する免疫入門。奇をてらわない落ち着いた筆致とわかりやすさが特徴だ。

(NHK出版 2300円+税)

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