新春!伝統芸能

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「1冊まるごと、神田松之丞」PEN編集部編

 近ごろ若者の間では、にわかに伝統芸能ブームだ。



 落語の人気は前々からだが、講談となるとよほどの好き者でないと難しい。と思っていたらこの人。1983年生まれの今年36歳。独演会を開けばチケットはたちまち売り切れの人気講談師。本書「pen+」完全保存版はその特集だ。

 立川談志を生で聞いて感動し、大学時代は寄席に通いっぱなし。そんな経験の豊富さが芸の肥やしになっているという。自分の話芸を客観的に見る目が自然に養われたわけだ。

 独自に古典の通し演目を復活させる一方、オリジナルの新作でも客を沸かせていまや大人気。「2年で真打ちに昇進させてくれ」などラジオ番組では生意気な発言も多いが、たかだか二つ目の身分で、春風亭昇太や笑福亭鶴瓶、伊集院光ら並み居る大先輩まで引っ張り出し、取材に応じさせている。上げ潮に乗った若手ならではの威勢の良さを感じさせる。

(CCCメディアハウス 926円+税)

「儚 市川染五郎」市川染五郎著 操上和美写真 新井敏記文

 伝統芸能といえば、やはり歌舞伎。昨年初めには松本白鸚、幸四郎、そして初々しい市川染五郎のご存じ高麗屋3代の襲名披露が行われた。本書はその若き人気役者、今年ようやく14歳になる市川染五郎の写真とインタビュー。

 高麗屋の特徴になった男らしい眉と目鼻立ち。当節のアイドルなど足元にも及ばない小さな顔と手足の長さだが、本人は長い手足が嫌だという。日本舞踊は手足の短い時代に完成された芸。それゆえ洋風のプロポーションではさまにならないのだ。

 中学生と思えない大人っぽい発言は、藤井聡太や大谷翔平にも通じそうな今どきの若者らしい。歌舞伎なんて知らないというギャルが、どっとごひいきになりそうなファンブック。

(講談社 1800円+税)

「松竹と東宝」中川右介著

 映画界で松竹と東宝は並び立つ存在だが、歌舞伎界では松竹が圧倒する。東宝は映画スターでもあった長谷川一夫で東宝歌舞伎を成功させたが、長谷川の死後は鳴かず飛ばずで自然消滅。しかし歌劇団になると東宝の大本である宝塚は隆盛、対する松竹歌劇団(SKD)は70年代に衰勢。東宝の創業者は慶応卒で三井銀行出身のエリート、小林一三。対する松竹は、京都の芝居小屋の売店の子に生まれた白井松次郎と大谷竹次郎兄弟。社名は彼らの「松」と「竹」を1文字ずつとったものだ。

 本書はこのすべてに対照的なライバルたちを描く芸能史。企業史というには人間的なエピソード満載で正月の読書には最適だ。

(光文社 900円+税)

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