「いいね!」に潜む依存症への道

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 依存症といえば、薬物やアルコールが真っ先に思い浮かぶ。確かに、かつての依存症は“物質”への依存が主だった。しかし、近年台頭しているのは、物質の摂取を伴わない“行動”への依存。その多くが最新のデバイスとテクノロジー、つまり、スマホとネットに関わるものだ。

 アダム・オルター著「僕らはそれに抵抗できない」(上原裕美子訳 ダイヤモンド社 1800円+税)では、現代社会をむしばむ新しい依存症について、その仕組みを明らかにしている。

 何らかの悪癖を常習的に行う行為は「行動嗜癖」と呼ばれている。これ自体は新しいものではなく、ギャンブルにのめり込む依存症などは昔からあった。依存症は、環境と状況に引き起こされるもので、立ち向かうためには依存の対象から離れるしかない。しかし現代、各種のデバイスやネット環境は仕事や学習になくてはならないものとなっている。離れて暮らすことなど不可能に近い。

 加えて、最新テクノロジーの多くはユーザーが夢中になり、抵抗できなくなるようデザインされている。例えば、インスタグラムの依存性は「いいね!」によるところが大きい。大量の「いいね!」を体験したら最後、報われる感覚をもう一度味わおうと、ネタを探して次々に写真を投稿せずにはいられなくなる。

 スティーブ・ジョブズはかつて、自分の子供たちに決してiPadを使わせなかったという。その依存性を十分に理解していたためだろう。本書では、「進歩の実感」や「難易度のエスカレート」など、行動嗜癖を発生させる6つの要素を解説しながら、その危険性に警鐘を鳴らしている。新しい依存症への対応策も語られている。やめられない行動がある人は必読だ。

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