バンクシーが繰り出す“イタズラ”の真意に迫る

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 バンクシーという覆面アーティストが日本で広く知られるようになったのは、2018年の「シュレッダー事件」からだろう。ロンドンのオークションハウスで競売人のハンマーが振り下ろされた瞬間、当の作品がバラバラに切り刻まれたあの事件だ。

 吉荒夕記著「バンクシー 壊れかけた世界に愛を」(美術出版社 2000円+税)では、世界のあちこちで仕掛けられてきたバンクシーによる“イタズラ”を追いながら、その真意を分析している。

 路上の壁面にゲリラ的に描かれる、社会風刺の効いた絵で人気を博しているバンクシー。一方、有名美術館を標的にしたパフォーマンスでも知られている。例えば、“勝手に作品を展示する”という事件だ。

 ロンドンのテート・ブリテン美術館にいつの間にか展示されていたバンクシーの絵は、一見すると田園風景を描いたB級作品だったが、風景画の前には警察の立ち入り禁止のテープが貼りつけられていた。そして作品解説ラベルには「犯罪監視社会の英国は我々の田舎を台無しにする」と書かれていたという。体制側がバンクシーらの表現活動を破壊行為と犯罪扱いするなら、体制側が行う監視こそがもっとも根深い破壊行為だという皮肉が込められていたようだ。

 さらにバンクシーは、その後に発行した著書の中でテート・ブリテン美術館の監視カメラが捉えた映像の写真を掲載。そこには自身が勝手に絵を展示している様子が映し出されており、読者を“監視カメラを監視する側”に導くことで、現在の監視社会を意識的に考えるよう促したのだという。

 さまざまな作品の写真を掲載しながら、そのメッセージに迫る本書。バンクシーの入門書としてもおすすめだ。

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