女子による女子のための女子の物語

公開日: 更新日:

「チャーリーズ・エンジェル」

 韓国映画が米アカデミー賞で話題。昨今の「多様性ばやり」の結果とも、米映画界の企画力低下の反映ともいわれるが、安直な印象のリメーク物にも意外な変化がある。今週末封切りの「チャーリーズ・エンジェル」もそれだ。

 周知のとおり元は1970年代の人気TVシリーズ。2000年の映画化では台湾系のルーシー・リューが入って「多様性バンザイ」ともてはやされたが、今回は白人2人に黒人1人で「逆戻り」と評する声も。

 でもそれはお門違いだろう。70年代のお色気探偵ドラマが00年に団塊ジュニア世代の“女にもできるわよアクション”になり、今回は“ガールズパワー”全開路線に舵を切った。そう見たほうがいい。

 もはや男の客は無視。いつまでも女子ぶりたい熟女層も不要。その代わり小中高のホンモノの女子世代に向けて自己実現の幻想を売る。その商魂が徹底しているのだ。

 それが証拠に「オトコ目線」で見たお色気度は今回が最低。主役トップのクリステン・スチュワートは典型的な女子校のはみ出し者タイプだし、ナオミ・スコットは運動オンチの転校生。多少とも成熟を感じさせるのは英国出身の黒人女優エラ・バリンスカだけ。だがこの配役も、助演を兼ねる監督エリザベス・バンクスの深謀の産物だ。「ピッチ・パーフェクト」シリーズで巧妙な時代センスを見せた彼女は、「女子による女子のための女子の物語」に見える商業作品を作り上げたのである。

 女子力については菊地夏野著「日本のポストフェミニズム」(大月書店 2400円+税)が最近のフェミ文献では出色。副題に「『女子力』とネオリベラリズム」。オトコ優位社会を勝ち抜く能力=「女子力」という分析概念で「フェミニズムは終わった」とする現代日本の状況を突く。もう一歩進んで、物神化された「オンナ向け女子」イメージという観点が入ると鬼に金棒か。

<生井英考>

【連載】シネマの本棚

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?