文庫で読むおもしろ雑学本

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「オノマトペ 擬音語・擬態語の世界」小野正弘著

 新型コロナウイルスなど暗いニュースばかり聞こえてくる昨今。こんな時は別世界をのぞいて、気分転換を図ってはいかが。今回は言葉にまつわるものから、オリンピックまで「へえ!」とうなること間違いなしの5冊を紹介。おもしろ雑学の世界を楽しもう。



 オノマトペとは「ゴーン」(鐘)のような擬音語と、「クルクル」(回転)のような擬態語とを総称したもの。思えば、一日の生活は「ガバッと起き」「あたふたと着替え」などオノマトペに囲まれているようなものだが、最も古いオノマトペは「古事記」に登場する。イザナキとイザナミがクニをかき回し始める場面で「こをろこをろ」(カラカラ)とかき鳴らし、また、「もゆら」にとえりゆらかして、とあるのだ。「もゆら」とは宝石の触れ合う音とされるが、現在の感覚ではわからない。

 劇画「ゴルゴ13」ではライターの火がつく音を「シュボッ」と表現しているが、主人公ゴルゴのキャラクターに合っている。もし「カチカチ」だったら100円ライターに感じられ、迫力も薄まっただろう。

 古典から海外の表現まで豊富な事例でオノマトペの世界を紹介。

(KADOKAWA 880円+税)

「古代オリンピック 全裸の祭典」トニー・ペロテット著 矢羽野薫訳

 オリンピックの起源は神ゼウスに捧げる祭典で、宗教儀式のついでに競技会を開くという発想だったという。古代ギリシャの多神教文化を凝縮した究極のエンターテインメントであり、競技場の内外には、美を競う人気投票あり、ホメロスの朗読あり、大食い競争などあらゆる娯楽が集まり、開催の5日間は大いに盛り上がったという。競技の主な18種目の中には短距離走や中長距離走、レスリングなど現代になじみ深いものもあるが、戦車競走や、反則は相手の目を突くことだけという格闘技もあった。

 一方で古代のスポーツは勝利も金次第で、ローマ皇帝ネロから巨額の賄賂を受け取った審判が皇帝を勝者と認めたという。紀元前8世紀から1200年もの間、一度も中断されることなく4年に1回開催されたオリンピックの熱狂を伝える。

(河出書房新社 880円+税)

「<英国紳士>の生態学」新井潤美著

 ヘンリー王子夫妻の王室離脱でにわかに耳目を集めるイギリスは、今なお「階級」が残る社会。中でも「ミドルクラス」の存在はイギリスを理解する上で重要だという。ミドルクラスは、大きくは上流階級に属する「アッパー」、ワーキングクラスと同じ階層に分類される「ロウアー」とに区分されており、アクセント、家、車、学校、生活習慣まであらゆる面で異なるのだ。

 たとえばロウアークラスは、郊外の小ぎれいな家に住み、夫は毎日電車で通勤し、妻は家で家事をしながら夫の帰りを待つ。この家庭を大事にする態度がまさしく「ロウアー」で、アッパーは家庭でなく社交界が行動の中心である。言葉も死ぬことを「PASS AWAY」など婉曲表現を使うのがロウアー的用法だというから驚きだ。

 19世紀以降、嘲笑の対象とされてきた「ロウアー」を中心に階級社会を紹介する。

(講談社 960円+税)

「村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝」栗原康著

 1895年に福岡県糸島郡の貧しい大家族の長女として生まれた野枝は、子供の頃から気が強く、自分が正しいと思えば相手が誰であっても頭を下げない少女だった。

 好奇心旺盛で、勉強もできた野枝は田舎暮らしを嫌い、14歳の時、親戚を頼って上京し、上野高等女学校に入学。そこで27歳の教師・辻潤に出会い、恋に落ちる。しかし野枝には親が決めた縁組があり、卒業後、地元で結婚するが、9日目に野枝は婚家を飛び出し、辻と暮らし始める。

 雑誌「青鞜」編集部に職を得、旧態依然とした家族制度、セックスなどの記事を発表。辻との間には2子をもうけるが、やがて思想家・大杉栄との仲を深め、ますます精力的に執筆活動を広げる――。

 ウーマンリブの元祖・野枝が、大杉や甥と共に国家に惨殺されるまでの28年の生涯をつづる。

(岩波書店 1120円+税)

「驚くべき日本語」ロジャー・パルバース著 早川敦子訳

 日本語は曖昧なため、外国人が習得するのは「難しい」といわれているが、日本語は話すだけならとてもやさしい言語だという。語彙は英語に比べて非常に少なく、語尾を変えるだけで異なる表現ができる。にもかかわらず、難しい、曖昧という神話が生まれたのは、主張しないという日本人の特徴、人との衝突を避けようとする日本社会の慣習のためだという。

 例えば「まあ、なんとかやっています」は「元気ですよ」の意味だと日本人は分かるが、外国人には理解不能。「~してもらいたいと思う」の表現は日本人には違和感はなくても、外国人には「何か企んでいる」印象を与えるのだ。

「アラサー」「マジ」などの省略語のユニークさ、「(誰それ)さん」は最もシンプルな敬語など、長年日本に暮らし、多くの日本文学を翻訳してきた著者が、新たな視点で日本語を語る。

(集英社 600円+税)

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