「コロナが加速する格差消費」三浦展著

公開日: 更新日:

格差加速

 著者は80年代から消費の最前線を見てきたマーケッター。「下流社会」など数々の流行語も編み出した。しかし今回のコロナ禍は自分にも「大打撃」という。若者たちのシェアハウスなど人のつながりによる「第4の消費」を唱える著者にとって「社会的距離」は真逆の試練だ。

 モノを買うより体験などのコトを買うという「コト消費」。カリスマ店員や下町のガンコ親父など、特定の場と人物の組み合わせが人気を呼ぶ「ヒト消費」。これらもコロナで大減速せざるを得ない。小さな下町の居酒屋などで閉店が相次いでいるのはその表れだ。

 ベテランマーケッターらしく本書は細部が面白い。「昭和」を求めて大宮まで足を延ばし、カップ麺や緑茶の消費と世代や「上流志向」の変数を掛け合わせた分析など、彼に続くマーケッターよりずっと読み応えがある。それだけにコロナの打撃に戸惑う本書の筆致は、事態の深刻さの表れだろう。格差が加速する一方、社会全体が下流化する。そんな暗い未来が行間から見えるようだ。

(朝日新聞出版 810円+税)

【連載】ウィズコロナ時代 本で読み解く経済の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」