「狸の腹鼓」宇江敏勝著

公開日: 更新日:

 スペイン風邪が大正7年の春ごろから都会ではやり始めた。地方まではこないと思っていたのに海岸の田辺の町でも死者が出るようになった。

 熊野の神域の入り口にある高原熊野神社ではスペイン風邪が村に入らないよう注連縄(しめなわ)を張り渡したが、学校も休校になり、大通りにも人影はない。牛車で炭などを運ぶ仕事をしている喜三次は、死者の持ち物を焼く煙を見て、伝染病がはやった1年ほど前のことを思い出していた。

 小学校の同級生だった桝屋の娘、康代は高等女学校に進んで、金持ちとの縁談が調ったのだが、労咳(ろうがい)になって家にこもっていた。康代が会いたがっていると言われて喜三次が枡屋に行くと、康代は、昔、喜三次が教えてくれた蝶の幼虫の巣を見たいという。(「牛車とスペイン風邪」)

 山村に生きる人びとを描く4編の短編。

(新宿書房 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  2. 2

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  3. 3

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  4. 4

    鈴木紗理奈以外にもいた…あのちゃんが過去に口にしていた“キライな芸能人”の実名

  5. 5

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  1. 6

    日本ハムがソフトBに8戦全敗の悲惨…崩壊投手陣が口にする「伏見寅威ロス」

  2. 7

    元サッカー日本代表・大津祐樹さんはビジネスでも成功 年商300億円の高級腕時計会社の社長に

  3. 8

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  4. 9

    DeNAビシエド電撃引退のウラとフロント批判殺到の必然《もうハマスタに行こうとは思わない》

  5. 10

    文科省「教育の政治的中立性」で波紋…なぜ森友学園がセーフで、同志社国際がアウトなのか?