「狸の腹鼓」宇江敏勝著

公開日: 更新日:

 スペイン風邪が大正7年の春ごろから都会ではやり始めた。地方まではこないと思っていたのに海岸の田辺の町でも死者が出るようになった。

 熊野の神域の入り口にある高原熊野神社ではスペイン風邪が村に入らないよう注連縄(しめなわ)を張り渡したが、学校も休校になり、大通りにも人影はない。牛車で炭などを運ぶ仕事をしている喜三次は、死者の持ち物を焼く煙を見て、伝染病がはやった1年ほど前のことを思い出していた。

 小学校の同級生だった桝屋の娘、康代は高等女学校に進んで、金持ちとの縁談が調ったのだが、労咳(ろうがい)になって家にこもっていた。康代が会いたがっていると言われて喜三次が枡屋に行くと、康代は、昔、喜三次が教えてくれた蝶の幼虫の巣を見たいという。(「牛車とスペイン風邪」)

 山村に生きる人びとを描く4編の短編。

(新宿書房 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「豊臣兄弟!」白石聖が大好評! 2026年の毎週日曜日は永野芽郁にとって“憂鬱の日”に

  2. 2

    川口春奈「食べ方が汚い」問題再燃のお気の毒…直近の動画では少しはマシに?

  3. 3

    あの人「なんか怖い」を回避する柔らかな言葉遣い

  4. 4

    自分探しで“変身”遂げたマリエに報道陣「誰だかわからない」

  5. 5

    (1)高齢者の転倒は要介護のきっかけになりやすい

  1. 6

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 7

    「誰が殺されてもおかしくない」ICE射殺事件への抗議デモ全米で勃発

  3. 8

    解散総選挙“前哨戦”で自民に暗雲…前橋出直し市長選で支援候補が前職小川晶氏に「ゼロ打ち」大敗の衝撃

  4. 9

    業績悪化で減収減益のニトリ 事業の新たな柱いまだ見いだせず

  5. 10

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網