「騒がしい楽園」中山七里著

公開日: 更新日:

 園児への指導力を見込まれ、埼玉県の片田舎から世田谷区の閑静な住宅街の一角に立つ若葉幼稚園に異動してきた教諭の神尾舞子。着任早々、園長から騒音と待機児童問題トラブルがあることを聞かされるが、その日の2時間目、舞子は子供の声がうるさいと抗議にやってきた町内会長と対峙するはめに。さらに翌日には入園希望者向けの授業参観では、どうしても子供を入園させたいと食い下がる久遠友美につかまり辟易(へきえき)する。

 そんなある日、舞子が担当する年長クラスの結愛の父親が死亡したとの知らせが入った。それが悲劇のとば口だったかのように、園内の小動物が次々と惨殺される事件が続く。園の方針で舞子は同僚の池波と夜回りをした翌朝、園の正門で結愛の死体が発見された――。

 安楽死や臓器移植、いじめなど社会問題をテーマにした作品も多い著者の最新作。今作では幼稚園という子供たちの楽園を舞台に、少子化や待機児童、親同士の確執など、子供絡みのトラブルを各所に忍ばせ物語を展開。無垢(むく)な子供たちと大人たちのエゴの対比が際立つミステリーだ。

(朝日新聞出版 1500円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々