「[ヴィジュアル版]感染症の歴史」リチャード・ガンダーマン著 野口正雄訳

公開日: 更新日:

 人類の歴史は感染症との闘いの歴史だと言われるが、現代人はいままさにその渦中を生きている。

 本書は、過去から現在までの人類と感染症の関係を解説したビジュアル・テキスト。

 古代ギリシャのペロポネソス戦争(紀元前431―404)の勝敗を決する要因となったのも疫病だった。ペロポネソス戦争は、海洋都市国家アテネの勢力拡大を危惧したスパルタとの戦い。

 アテネ軍の戦略によって周辺地域の住人が都市の城壁内に移動し、都市が過密化。物資が不足し、人々がひしめき合って暮らすようになり保健衛生環境が悪化する中、追い打ちをかけるように疫病が都市に侵入したという。

 その病原体の正体は、まだ分かっておらず、発疹チフスや腸チフス、エボラ出血熱などではないかといわれている。

 この疫病によってアテネの人口の25%、2万5000人もが命を奪われ、戦いに敗れたアテネはスパルタの属国となった。

 史上最も多くの死者を出したパンデミックは、ご存じのように黒死病(腺ペスト)で1347年からわずか4年間で1億~2億人が犠牲になった。

 ペストの出現はそのときが初めてではなく、5000年以上も前にヨーロッパで埋葬された遺骸からもその病原菌が見つかっている。最初のパンデミックは黒死病から約800年前におき、東ローマ帝国を荒廃させたという。

 以後、天然痘のワクチンを兵士に接種して独立戦争を勝利に導いた指揮官のワシントン(後のアメリカ初代大統領)をはじめ、結核やスペイン風邪、梅毒などの性感染症、そして今回の新型コロナウイルスまで。

 流行がどのように起こり、拡大し、社会や科学者はどのように対応してきたのか。その背景にあるさまざまなドラマを交えて解説する。

(原書房 3960円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    国分太一コンプラ違反で無期限活動休止の「余罪」…パワハラ+性加害まがいのセクハラも

  2. 2

    クビ寸前フィリーズ3A青柳晃洋に手を差し伸べそうな国内2球団…今季年俸1000万円と格安

  3. 3

    高畑充希は「早大演劇研究会に入るため」逆算して“関西屈指の女子校”四天王寺中学に合格

  4. 4

    「育成」頭打ちの巨人と若手台頭の日本ハムには彼我の差が…評論家・山崎裕之氏がバッサリ

  5. 5

    進次郎農相ランチ“モグモグ動画”連発、妻・滝川クリステルの無関心ぶりにSNSでは批判の嵐

  1. 6

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  2. 7

    吉沢亮「国宝」が絶好調! “泥酔トラブル”も納得な唯一無二の熱演にやまぬ絶賛

  3. 8

    ドジャース大谷「二刀流復活」どころか「投打共倒れ」の危険…投手復帰から2試合8打席連続無安打の不穏

  4. 9

    銘柄米が「スポット市場」で急落、進次郎農相はドヤ顔…それでも店頭価格が下がらないナゼ? 専門家が解説

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題か...大谷の“献身投手復帰”で立場なし