「姫」花村萬月著

公開日: 更新日:

 儺島(おにやらいじま)の網元、利兵衞は嵐の晩、諏訪神社のご神木が哭(な)いているのを聞き、神事に用いる薙鎌を持って神社に向かった。ご神木は倒れて鳥居を断ち割り、石段を滑り降りて麓の集落を破壊した。

 沖合に浮かぶ南蛮船に気づいた利兵衞は、集落でただ一人生き残った権藏と南蛮船に乗り込む。船内には逆十字が打ち付けられた無数の棺が並んでいた。金色の小さな棺を開けてみると、金髪の全裸の幼女が横たわっている。利兵衞は死体のように冷たい女児を抱き上げ、なんと名付けようかと思案していると、女児の口が「ひめ」と動いた。姫は10日ほどで年頃の娘となり、長い長い流浪の果てに父上と出逢ったと言った。

 戦国時代を舞台に、特殊な能力をもった「姫」が支配者をあやつる、壮大な時代小説。 (光文社 2420円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑