「科学は『ツキ』を証明できるか」ベン・コーエン著 丸山将也訳

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 バスケットボールで連続してシュートを決める状態、つまり「絶好調」「ツイている」「ノッている」場合を「ホットハンド」という。このホットハンド現象はバスケットに限らず多くのジャンルに存在し、多くの人が経験している。これは体験的にも理解しやすいように思えるが、イスラエルの心理学者らが、ホットハンドは実在せず、それを信じるのは間違っているという「ホットハンドの誤謬」説を打ち出した。果たしてホットハンドは存在しないのか。本書はホットハンドをめぐるさまざまな研究をたどりながらこの謎に迫っていく。

 アメリカのバスケットボール界で驚異的なスリーポイントシュートの成功率を記録したステフィン・カリーに始まり、短期間に傑作を次々に生み出したシェークスピア、シネマスコアで3作もA+の評価を得た映画監督ロブ・ライナーと、才能がありながら歴史に埋もれてしまった英国天才女性作曲家の例を引きながら、ホットハンドを生み出す環境や要因を考察していく一方で、ノーベル賞受賞の経済学者、米国の投資家など、ホットハンドを信じない人たちの考えも紹介していく。

 続いて、「ギャンブラーの誤謬」という、ある事象が特定の期間中に多く起こった場合に、その後の事象の発生頻度が低くなると思い込んでしまう事例を取り上げる。例えば、難民申請を許可するかしないか判断する裁判官が、申請の内容のいかんにかかわらずその前の裁判で認可した直後には次の裁判の認定する度合いが明らかに低くなるという。要するに、知らぬうちに人間の判断には多様なバイアスがかかっているということだ。

 そこから著者は、「ホットハンドの誤謬」にもそうしたバイアスがあるのではないかという。この問題、まだ決着がつくには至っていないようだが本書には多彩なエピソードと共に成功の秘訣へのヒントが満載。頭の体操にもうってつけだ。 <狸>

(白揚社 2970円)

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