「薔薇色に染まる頃」吉永南央著

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 北関東の紅雲町でコーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む杉浦草は、ある日、東京のアンティークショップ「海図」のオーナー金源から電話を受ける。それは数十年前、事情があって草が手放した帯留めが戻ってきたという知らせだった。

 翌日、海図を訪れた草は、近所のバーの雇われ店長・ユージンが行方不明で、恐らく殺されただろうと聞かされる。

 店を出た草は、人目を忍んでバーに向かう。実は海図に通いだした数年前からユージンとは顔見知りで、「俺が死んだら運んでほしいものがある」と頼まれていたのだ。草はメモの指示に従い、バーに隠された2つの札束を新宿区の怪しげな質屋に運ぶ。これで終わった、と安堵したのも束の間、京都へ向かう新幹線で突然、何者かに追われている若い母親から小さな男の子を託され……。

萩を揺らす雨」「月夜の羊」など累計75万部突破のシリーズ第10弾で、本作では和服姿のお草さんと無口な男の子の逃避行を描く。大金、傷害事件、ネグレクトなど社会の日陰をなぞりつつ、お草のピンチを、遠く離れた紅雲町の仲間たちが助けていく。草の運んだ現金にからむ命の行く末が明らかになるラストが圧巻だ。

(文藝春秋 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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