「残照」本城雅人著

公開日: 更新日:

 ベテラン騎手の飯倉元春が、410キロという小柄で華奢(きゃしゃ)な競走馬アイウイッシュに騎乗して6年ぶりにGⅠレースで優勝するところから物語は始まる。

 不眠や減量の苦労を乗り越えた末の復活劇に仲間は喜びの声をかけてきたものの、そんな元春に嫉妬したのか何者かがネット上で元春を誹謗(ひぼう)中傷していることを知る。犯人は、5年前にレース中の事故で亡くなった元春の後輩である渋瀬祥吾の妻・さやか。事故の原因は元春にあるなどと書き込んでいたため、弁護士を使って発信者情報の開示請求をした結果判明したのだった。

 しかし、元春がこれ以上の書き込みをやめてほしいと抗議にいった日の夜、さやかが自宅マンションのベランダから転落死する。警察からあらぬ疑いをかけられるなか、さまざまなトラブルが元春を襲う。果たして事件の真相とは……。

 スポーツ紙記者の経歴を持ち、2017年に「ミッドナイト・ジャーナル」で吉川英治文学新人賞を受賞した著者の最新作。現場を知っている元記者ならではの描写力で、競馬のジョッキーの世界を描きながら、主人公が巻き込まれた事件の謎解きにいざなう。

(文藝春秋 1980円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ