「ファスター」ニール・バスコム著 吉野弘人訳

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 自動車のスピードに魅せられレーサーを志す若者たちがいた。本書は、人々を熱狂させる自動車レースが次々開催された1930年代に、モータースポーツの現場でどんなことが起きていたか、命懸けのドライバーたちの格闘とともに、自動車産業界の思惑や政府のプロパガンダ利用の動きまでにも迫ったノンフィクションだ。

 本書には当時活躍したレーサーが登場する。1930年のモナコグランプリでライバルから優勝をもぎ取ったルネ・ドレフュス、雨のレースに強かったことからレインマスターと呼ばれるようになったルディ・カラツィオラ、最高速度記録を次々と塗り替えていくベルント・ローゼマイヤーらは、国籍や人種などの垣根を越えてレースへの情熱を燃やしていた。

 しかし、欧米に不況と戦争の不穏な足音が訪れるにつれ、モータースポーツが単なるスポーツから国家の威信をかけた別物へと変わり、レーサーもそれに巻き込まれていく。死と隣り合わせの挑戦と引き換えに国民的英雄として祭り上げられるレーサーの葛藤、徹底的な政治利用を試みるナチスの動きなどが詳細に描かれている。

(パンローリング 2640円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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