「ゾンビ3.0」石川智健著

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 タイトルから、パニック小説と想像しがちだが、本書は生命科学を題材にしたホラー小説である。

 新宿区戸山の予防感染研究所に休日出勤をしていた香月百合は、WHOのサイトの「原因不明の病気蔓延により、人が凶暴化」という記事に驚く。シリアなど紛争地で人が突然気を失い、1分後には人に襲い掛かるというのだ。まさか、と思ったが、すでに研究所のすぐ近くでも人間が人間を襲うという事態が発生していた。ニュース番組に映し出されたその様子はまるで、ゾンビだった。

 館内にいるのは、研究員の下村や医学博士の加瀬ら40人。そこへ、厚労省から「建物を死守しつつ原因究明を」との要請が入る。館内にとどまった研究者たちの未知なる敵との戦いが始まった。

 外部から助けを求めてやってきた大学生でゾンビマニアの城田、刑事の一条らも加わり、ゾンビに関する情報収集に奔走。ところが3日目、館内にとどまっていた研究員の一人がゾンビ化し、3人が襲われる。電力も残り少なくなった中、果たして香月たちは生き残って原因究明を果たせるのか。

 感染症やウイルス説などの可能性を検証、追い詰められた人々の心理描写にページを繰る手が止まらなくなる。日韓同時刊行の「新ゾンビ理論」小説。 

(講談社 1650円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

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