「化け者手本」蝉谷めぐ実著

公開日: 更新日:

「化け者手本」蝉谷めぐ実著

 物語の舞台は、文政時代の江戸。元女形の田村魚之助と、なぜか彼のお供としてたびたび声をかけられる日本橋の鳥屋の藤九郎の元に、不可解な事件の話が持ち込まれた。

 依頼の主は、中村座の座元。なんでも、中村座の芝居小屋で「仮名手本忠臣蔵」の演目が終わった後に、客席で男の変死体が見つかったというのだが、その死体は首の骨を折られて、その両耳から棒が突き出た状態だったらしい。

 これを口実にお上に興行を止められてはかなわないと、そっと親爺橋の下に死体を動かしてしまったのだが、同心が犯人を捕まえられないまま、同じように殺された2人目の死人が出てしまった。奉行所に知られたら中村一座が手鎖になると思い、魚之助に犯人捜しの依頼をしたというのだ。何かに見立てた殺しが行われたのではという推理のもと、魚之助と藤九郎のコンビが解決に向けて動き出すのだが……。

 本書は、著者のデビュー作で第11回小説野性時代新人賞を受賞した「化け者心中」に続く、魚之助&藤九郎コンビの江戸推理劇第2弾。芝居に人生を捧げる歌舞伎役者たちの世界が生き生きと描かれている。

(KADOKAWA 1980円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  3. 3

    松下洸平“電撃婚”にファンから「きっとお相手はプロ彼女」の怨嗟…西島秀俊の結婚時にも多用されたワード

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  1. 6

    (1)広報と報道の違いがわからない人たち…民主主義の大原則を脅かす「記者排除」3年前にも

  2. 7

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  3. 8

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  4. 9

    自民党「石破おろし」の裏で暗躍する重鎮たち…両院議員懇談会は大荒れ必至、党内には冷ややかな声も

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」