「可燃物」米澤穂信著

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「可燃物」米澤穂信著

 12月8日午後10時、群馬県太田市昭和町3丁目のゴミ集積所から出火していると、消防に通報が入った。偶然通りかかった近所に住む男が消火したため大事には至らなかった。ところが、これを機に放火とみられる出火が続く。いずれも大事に至らなかったが、連続放火と判断した県警本部は捜査第1課の葛(かつら)警部を派遣、捜査が開始された。

 共通点は不審火出火時刻と、可燃ゴミであること。葛らは3件の通報者に当たるが不審な点は見つからない。そんな中、犯行がピタリと止まり、葛の頭に一つの疑問が浮かぶ。やがて張り込みの刑事から、出火現場近くで、初老の男が可燃ゴミを眺めていたとの報告が。男の名は大野原孝行。太田南署の年かさの刑事がその名に聞き覚えがあるといい、数年前に起きた家具店の火災について話し始める。(表題作)

 余計なことはしゃべらず、上司にも部下にもよく思われていないが、捜査能力だけは卓越した葛警部を軸に据えた警察ミステリー。舞台は群馬県警だ。関係者の証言の整合性を探る一方、容疑者の心理や犯行動機に着目し、徐々に真相へと迫っていく。作中に犯人につながるヒントが仕込まれており、それを探しながら読むのもまた楽しい。犯人の動機、犯人は誰なのかなど、タイプの違う全5編を収録。 (文藝春秋 1870円)

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