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「香港人に希望はあるか」羅冠聡著 串山大訳

「香港人に希望はあるか」羅冠聡著 串山大訳

 2014年の「雨傘運動」以来、香港民主化闘争の最前線に立ってきた著者。一時は香港史上で最年少の立法会議員(国会議員に相当)に選ばれたものの、中国からの弾圧で議員資格を剥奪され、投獄に至る。それでも地道な活動を経て、19年の逃亡犯条例反対闘争では前線に立った後、ついにイギリスに政治亡命。いまではノーベル平和賞の有力候補にもなっているという経歴の持ち主だ。

 しかも本書は原著からの単純な翻訳ではなく、中国からの政治的圧力やコロナ禍の影響による制限などで紆余曲折を経ながら、著者がSNSなどで個別に発表した中国語の文章を集め、訳者と版元の担当者が議論を闘わせて独自に編集したものだという。

 収録された文章は「雨傘運動」の後の活動の低迷期に書かれたものが多く、それが地道に社会運動を継続することの誠実な努力をうかがわせる。全体を通して読むと、断片的な文章の集成とは思えないほど、一貫した著者の思いが伝わってくる。

(季節社 1760円)

「わたしの香港」カレン・チャン著 古屋美登里訳

「わたしの香港」カレン・チャン著 古屋美登里訳

 1990年代初頭に生まれたミレニアル世代の著者。香港でSARSが猛威を振るったときはまだ小学生だった。またこの年、香港では大スターのレスリー・チャンが自殺し、中国への返還から6年目の香港政府は暴動、反逆、転覆を禁ずる国家安全維持法案を提出。このときから「香港は変わってしまった」という。

 インターナショナルスクール育ちで、英語での授業が中心の香港大学で法学とジャーナリズムを学んだ著者は「ニューヨーク・タイムズ」や「フォーリン・ポリシー」など英語圏の有力紙にも記事を書きながら、自分たちの声を発信する場を探して雑誌を創刊し、デモを取材して小さな声を届けながら、困難な政治状況のもとで必死にアイデンティティーを探しているのだ。

(亜紀書房 2750円)

「満腔、香港」樋泉克夫著

「満腔、香港」樋泉克夫著

 団塊世代の著者が初めて香港の地を踏んだのは1970年。まだ日本に外貨持ち出し制限のあった時代で、むろん香港はまったくの異国。最初に住んだ高層住宅ではエレベーターの中で住人の飼い犬が平気で排泄し、留学先で開いてくれた歓迎会は「香肉」の鍋。実はこれがさっきまでとびはねていた子犬の肉なのだ。

 そんなエピソードが500ページを超える大冊から次々に飛び出してくる。痛快無類の青春記は半世紀前と現在を自由に往還しながら、ニクソン訪中や三島由紀夫事件の回想などが語られる。当時の香港は、路線バスの運転手の顔を持つ「裏社会のアニキ」も日本のヤクザとつながる「共産党系企業家」、闇賭博の用心棒をする警官などアヤシげな面々には事欠かなかったという。

 京劇にハマって芝居小屋に入りびたった「戯迷」(芝居狂)の日々など、いまの香港への苦い思いを行間ににじませながら、“消えた香港”の日々がまぶたに浮かぶ。

(H&I 4950円)

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