「京屋の女房」梶よう子著

公開日: 更新日:

「京屋の女房」梶よう子著

 時は寛政12(1800)年。江戸は京橋一丁目の煙草入れ屋「京屋」は店を開けた途端、次から次へと客が舞い込み、朝から大わらわだ。
 ここは、江戸一番の戯作者と誉れ高い山東京伝の店。京伝に身請けされ嫁いできた後妻のゆりは、慣れない町場の生活に奮闘していた。
 そんなある日、夫の朋友でくせ者の曲亭馬琴の言葉で、夫が菊の花が描かれた煙管を使っていることに気が付く。それは亡くなった先妻・お菊の形見ではないのか――。
 京伝とお菊との出会い。吉原でのあだ討ち騒動の手伝いや、さまざまな文人との付き合い。京伝からありのままを聞かされたものの、ゆりは京伝に楽しい記憶を残したまま逝ったお菊に嫉妬する。そんな折、かつてあだ討ち騒動を起こした侍・喜次郎が京伝を訪ねてきた。
 大河ドラマ「べらぼう」の主役・蔦重が見いだした山東京伝とふたりの妻を描く人情時代小説。お菊とゆりのエピソードを通して絵師たちが活躍した華やかな世界、そして夫婦の絆が丁寧に描かれる。京伝の優しさが隠された喜次郎来訪の理由にホロリとさせられる。
(潮出版 1870円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 3

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  1. 6

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 7

    小野田紀美経済安保相の地元を週刊新潮が嗅ぎ回ったのは至極当然のこと

  3. 8

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 9

    「しんぶん赤旗」と橋下徹氏がタッグを組んだ“維新叩き”に自民党が喜ぶ構図

  5. 10

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み