「不自然な食卓」クリス・ヴァン・トゥレケン著、梅田智世訳

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「不自然な食卓」クリス・ヴァン・トゥレケン著、梅田智世訳

 近年、各種医学誌が、超加工食品がうつ病や認知障害のリスクを高めることを発表し、米CNNでも超加工食品の摂取と早死にリスクとの関係を指摘するなど超加工食品への関心が高まっている。

 超加工食品(UPF)とは、「複数の素材(ほとんどは工業用途のみに用いられるもの)を融合した食品で……高度な装置と技術を要する一連の工業プロセスにより製造」された食品で、糖分、塩分、脂肪を多く含み、添加糖・香味料・乳化剤・保存料などの添加物が付与されている。ポテトチップス、菓子パン、カップ麺、クッキー、ビスケット、冷凍ピザなどがこれに当たる。

 感染症を専門とする医師でBBCのブロードキャスターでもある著者は、1カ月にわたって毎日のカロリーの80%をUPFから摂取する「UPFダイエット」に挑戦。その経緯を報告しつつ、UPFに関する種々の疑問を各種データや専門家へのインタビューを通じて解明していく。

 生物にとって食べるという行為の淵源から食品企業の倫理性や政府の対応まで実に幅広い知見で問題を検討していくが、結論として次のような問題点を挙げる。

 UPFは概してやわらかいので食べるスピードが速くなり、1分当たりのカロリー摂取が大幅に増えるにもかかわらず満足を得られない。乾燥して脂質と糖質が多く繊維質が少ないので、カロリー密度が極めて高く、ひと口当たりの摂取カロリーが多い。食生活から多様な自然食品を駆逐する(低所得層で顕著)。依存性があるためドカ食いを避けられない。乳化剤、保存料、加工デンプンなどの添加物が細菌の増殖を許し、脳や内分泌機能にも影響する可能性がある。その生産手段には膨大な補助金を必要とし、プラスチック汚染などの環境破壊を駆り立てる……。

 超加工食品が蔓延している現在、本書の指摘は重く受け取るべきだし、適切な対応も求められる。 〈狸〉

(早川書房 3300円)

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