「野町和嘉 人間の大地」野町和嘉著

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「野町和嘉 人間の大地」野町和嘉著

 世界各地の辺境とそこに暮らす人々にレンズを向けてきたフォトジャーナリストの半世紀以上に及ぶ活動を集大成したフォトエッセー集。

 氏が辺境への旅を始めるきっかけとなったのは、20代半ばで訪れたサハラ砂漠との衝撃の出会いだった。

 1972年2月、休暇で訪れたヨーロッパ・アルプスからの帰り道、現地で調達した中古車で友人と、パリからスペイン、モロッコを経由して、かねて憧れていたサハラへと向かう。

 サハラに入って2日目の夕刻、アルジェリア西部のケルザスというオアシスに着き、寝る場所を求めて途方に暮れていると、小学校の先生だという青年に声をかけられる。

 街道から10分ほど車を走らせた集落のはずれに、みすぼらしい小学校と彼の宿舎があり、その片隅で一夜を過ごした翌朝、散歩に出かけ、家の角を曲がると、眼前に圧倒的な砂の壁が現れた。

 澄み切った青空を背に、褐色の砂がうねりながら迫ってくる。

 やがてそこに集落からヤギの群れを連れた牧童が現れ、急いでカメラを取りに戻って撮影したという写真は、まるで一幅の絵画のようである。

 こうした圧倒的な自然が生活圏のすぐそばにまで押し寄せていることなど、現地に来て自分の目で見るまでは想像もできず、「こんなシュールな世界で一生を過ごす砂漠の住人たち」への好奇心がわいてきたという。

 砂漠のスケールに圧倒された氏は、以降、何度もサハラを旅する。

 あるときはアルジェから南へ2000キロに位置するサハラ越えの中継地・タマンラセットに暮らすトゥアレグ族を、また別のあるときはチャドのアベシェからリビアのセブハまで約1000キロの道程をコンパスも地図も持たずに300頭のラクダを連れて運ぶキャラバンに同行。ほかにもアルジェリア・サハラの最奥部、タッシリ・アハガルと呼ばれる無人地帯にある奇岩「マッシュルーム・ロック」など、いずれの旅もガイドをつけずに現地に飛び込み、人々の素顔や暮らしぶりを迫真の写真で紹介。

 サハラにはじまる辺境への旅は、アフリカ大陸を流れるナイルの源流を目指す旅へと続く。

 その旅で出会ったスーダン南部サッドの広大なサバンナで牛とともに暮らす牧畜民ディンカ族や、エチオピア北部ティグレ州の山岳の断崖を登ることでしかたどり着くことができない岩窟教会など。

 多くの人は、おそらく一生訪ねることもない(できない)ような土地を巡る。

 さらに異教徒の立ち入りが制限されているイスラム信徒の聖地メッカとメディナや、チベットの聖地・標高5000メートルのカイラス山を巡る巡礼路を五体投地でまわる巡礼者たちなど。

 生まれ落ちた土地で、その土地の習慣や宗教に忠実に一生を終える人々の姿に、人生とは、人間とは何かという永遠の問いに対するヒントを垣間見る。

(クレヴィス 3960円)

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