文庫で読む戦争を考える本特集(4)原爆は開発の地で暮らした科学者の妻「新古事記」村田喜代子著
太平洋戦争終結から81年を迎えた今年の夏。戦争は過去のものになるどころか、歴史が再び繰り返されても不思議ではない不穏な空気が世の中に満ちている。今回は再び愚かな道を進まないために読んでおきたい戦争の実態に迫る文庫本4冊を紹介する。
◇ ◇ ◇
「新古事記」村田喜代子著
第2次大戦中、米国のロスアラモスでは、オッペンハイマーらの科学者たちが秘密裏に集められ、原子力爆弾の開発が進められた。本書は、夫の仕事を知らないまま共にロスアラモスに引っ越した日系3世の女性アデラの視点で語られた、原爆開発の地で過ごした日々の物語だ。引っ越し先の住所は親にも伝えることが禁じられ、世界と隔絶した岩山の大地で、アデラは犬の世話をする仕事をして過ごすのだが……。
本書は、科学者の夫と共に原爆開発の地で暮らした女性が書いた手記「ロスアラモスからヒロシマへ」を元に著者が小説化したもの。世界を揺るがす計画が日常のすぐ隣で進行し、研究者自身でさえ衝撃を受けたその結末へとなだれ込んでいく様子が生活者としての妻の視点から手に取るように伝わってくる。
(講談社 1045円)


















