アカデミー3冠も不発 「それでも夜は明ける」苦戦の理由
米アカデミー賞のナンバーワン映画なのに、イマイチ盛り上がらない。
7日に封切りした第86回アカデミー作品賞受賞作「それでも夜は明ける」。日本での公開は受賞発表から5日後と絶好のタイミングだったが、全国の上映スクリーン数は少なく(59館)、公開時期が重なったドラえもん最新作の6分の1程度。脚色賞、助演女優賞にも輝いたアカデミー賞3冠なのに、寂しいお披露目になっているのだ。
「黒人の奴隷制度を描いた社会派。娯楽映画ほど集客が狙えないこともありますが、日本の洋画人気は衰退したまま。大々的にPRしないのがいい証拠で、アカデミーで3冠獲得といっても昔ほどブランド力や集客力はありません」(映画関係者)
■ポイントは「白人批判ではない描き方」
「テーマは重い。それでも見る価値のある一本です」というのは、映画批評家の前田有一氏だ。
南北戦争以前、米北部で自由黒人だった男性が拉致され、南部の綿花農園で12年もの間、奴隷生活を強いられた実話を基にした作品。選考の投票権を持つアカデミー会員の9割以上は白人である。長い歴史を誇るアカデミー賞で、奴隷制度や黒人差別をテーマにした作品の受賞は“皆無”だが、黒人の父親を持つオバマ政権も7年目。いよいよハリウッドも変わったのかと思われるが、「白人批判ではない描き方に受賞の勝因がある」とは前出の前田有一氏だ。