アカデミー3冠も不発 「それでも夜は明ける」苦戦の理由
「『それでも――』では、この事件はあくまでカネ目当ての誘拐犯によるもので、犯罪者は裁かれてしかるべきという趣旨に徹しています。血しぶきが飛ぶほど凄惨な鞭(むち)打ちのシーンを描くなど白人の黒人に対する残虐な仕打ちを社会に知らしめた作品ですが、主人公を救うのはブラッド・ピット演じる奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人で、白人が黒人の窮地を救うという構図。白人高齢者のアカデミー会員も、一票が投じやすかったといえるでしょう。スティーブ・マックイーン監督は聡明で知られる人物。自身も黒人で話題になりましたが、賞レースの特色を熟知した上で、すべて織り込み済みで製作したのではないでしょうか」
人種差別の歴史に斬り込んだ一本が脚光を浴びた意義は計り知れない。こうした作品がヒットすれば、子供向けのアニメ頼みの日本の映画界も変わったといえるのだが。