仏テロ背景の移民問題を浮き彫り 映画「サンバ」の出来ばえ

公開日: 更新日:

 仏パリで起きた連続テロ事件が世界を震撼させている。アルジェリア移民の子として生まれ育った兄弟が犯行グループに含まれていたことから、欧州では移民排斥運動にも火が付いている状況だ。

 移民と現地労働者の対立自体は今に始まったことではない。「マダム・マロリーと魔法のスパイス」(14年、米ほか)、「バンクーバーの朝日」(14年、日)など、ここ2カ月ほどでも移民ネタの映画が立て続けに公開されるなど、急激にこの問題に関心が集まっている空気は映画界にも伝わってきていた。そうした流れの極め付きが「サンバ」(14年、仏=公開中)だ。

 アフリカのセネガルから渡仏して10年間、レストランで真面目に下働きを続けてきたサンバ(オマール・シー)は、ささいなミスからビザの更新期限を切らしてしまう。無情にも国外退去処分を受けた彼は、移民対策ボランティアのアリス(シャルロット・ゲンズブール)の協力と、持ち前の前向きな性格で解決に努力するが、事態はそんな2人をあざ笑うかのように悪化の一途をたどるのだった。

 フランスにおける移民青年の転落人生をディテール豊かに描き、安易な移民政策に警鐘を鳴らすこの映画は、どこかくだんのテロリストの境遇と通じるところがある。事件が起きた後の今みると、その先見性は恐ろしさすら感じさせる。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    国分太一との協議内容を“週刊誌にリーク”と言及…日本テレビ社長会見の波紋と、噴出した疑問の声

  5. 5

    衆院定数削減「1割」で自維合意のデタラメ…支持率“独り負け”で焦る維新は政局ごっこに躍起

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  5. 10

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較