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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

強引な設定の妙 ジャンル崩しの異色ドラマ「カルテット」

公開日: 更新日:

「カルテット」(TBS系)の脚本は坂元裕二だ。出演が松たか子満島ひかり高橋一生松田龍平。そして演出は「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」の土井裕泰。これだけのメンバーが、何を見せてくれるのか。

 4人のアマチュア演奏家がカラオケボックスで出会う。バイオリンの真紀(松)、チェロのすずめ(満島)、ビオラの家森(高橋)、バイオリンの別府(松田)だ。弦楽四重奏のカルテットを組むことになり、別府の祖父が持つ軽井沢の別荘で合宿生活に入った。この強引な設定がうまい。

 彼らはそれぞれに鬱屈や葛藤を抱えている。共通しているのは音楽との関係だ。プロへの夢を追い続けるのか、趣味として音楽を続けるのか、二者択一を迫られている。また、夫が謎の失踪を遂げた真紀。その夫の母親から真紀に近づくことを依頼されたすずめ。さらに家森や別府の本心や狙いも不明のままである。

 このドラマはサスペンス、恋愛、ヒューマンといった枠を超えた、いわば“ジャンル崩しの異色作”だ。ここには「重版」の心や、「逃げ恥」のみくりのような、つい応援したくなる“愛すべきキャラクター”はいない。だが4人ともどこか憎めない、気になる連中だ。独特の暗さもあり、万人ウケしないかもしれない。しかし続きが見たくなる、クセになるドラマとしては今期ピカイチだ。

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