著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

銀幕に存在感を焼き付けた純粋に欲どしい俳優・宍戸錠

公開日: 更新日:

 感謝します。宍戸錠さん、長い人生、ほんとにお疲れさまでした――。

 昭和映画俳優が次々に世を去っていく。「わしは明石組の岩井や」の梅宮辰夫さんもそうだが宍戸さんも硬派の役者、いや、活動屋だった。日活の「殺しの烙印」(鈴木清順監督)なんてシュールな殺し屋の話など覚えてる人は少ないだろうな。1967年に主演したニューシネマだ。「仁義なき戦い・完結篇」でも広島やくざの組長を演じた。何役をやっても、個性をフル稼働させて、銀幕に存在感を焼き付けてみせる、純粋に欲どしい俳優だった。

 初めてご一緒したのは1989年、平成に変わった頃で、片岡鶴太郎が死刑囚役で主演したTBSの2時間ドラマだった。局の意向だから仕方なかったが、片岡鶴太郎などボクは実は役者とも思ってなくて「誰か気の許せる気さくな本物の映画俳優らしい人たちで脇役を固めてもらいたい。でないと落ち着いて撮る気がしないから」とプロデューサーに頼み、現場に来ていただいたのが宍戸さんだった。日活の「エースのジョー」がカメラの前に立ってくれるのがうれしくて、毎日の撮影が楽しかった。浅草あたりで夜のロケが終わると「カントクさ、渋谷行こうよ。俺の知ってる酒が飲めるうなぎ屋あんのよ」と誘ってくれた。横から、これまた大女優の淡路恵子姐さんから「なんでよ、私の身内がやってる六本木行こうよ。2人で行かなくたっていいじゃない」とアヤをつけられた。結局、3人で渋谷のスッポン屋に行って、それからバーに回った。酒好きな錠さんと聞いていたのに、映画の理論の話ばかりになり、「カントク、俺は今、日活時代の実録小説を考えてんだよ。必ず、3年後に仕上げっから」と真剣だった。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  3. 3

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  1. 6

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  2. 7

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  3. 8

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも