医師・森田豊さん “白い巨塔”を去った日が人生の分岐点に

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下が上に媚びへつらうと上の人間が裸の王様に

 どんな社会でもそうだと思いますが、下が上に媚びへつらっていると、上の人間が裸の王様になっちゃう。

 部長の僕が「こうしよう」と決めても、下が「先生、こちらの治療法の方がいいのではないですか」と言える環境。人間は失敗するし、たとえ医者でも失敗する。チームで支えあうことで、医療過誤を可能な限りゼロにする。だから、大門未知子の「私、失敗しないので」という名ゼリフは、医者が言いたくても、決して言えないことなんです(笑い)。

 その「ドクターX」に携わるきっかけは、その前に、テレビ朝日での別の医療ドラマの監修をやらせてもらったつながりです。同局の方たちとお会いした時に、「米倉涼子さんで女医のドラマをやるので、アイデアないですか」と聞かれ、私の経験をお話ししたら、「それやりましょう!」となったんです。「私、失敗しないので」「御意」は制作側が考えたのですが、私が語った白い巨塔の弊害に関する内容が基にもなっています。

「ドクターX」は、白い巨塔の世界でフリーの女医が患者のために難しい手術を成功させる。見ている人はスカッとしてくれていると思います。

 ドラマの影響は、視聴者だけでなく、医療界にも及んだと思います。若手医師のやる気が高まったり、外科を志す医師のモチベーションが高まったり、非効率的な教授回診が少なくなったり。

 ただ、放送が始まった頃は、大学の教授らに怒られるのではないかと思っていましたが、意外にも「面白かったよ。でもお手柔らかにね」と言われました(笑い)。

(聞き手=松野大介)

▽もりた・ゆたか 1963年東京都生まれ。医師として診療に従事しつつ、「ドクターX」全シリーズなど各種番組の監修やニュースコメンテーターとして活躍、バラエティー番組などに出演中。近著は「名医が教える 寿命を延ばす恋愛医学」(扶桑社)。

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