著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

8年ぶりの新作映画「無頼」フィルムは情感の色を表現する

公開日: 更新日:

 ここ半年間、映画館で大人が見られる映画がほんとになかった。今も、興行界はアニメに席巻されて、他には犯人捜しのドラマぐらいか。これは多くのアメリカ映画勢が本国のコロナ規制で公開中止されたままで日本公開のメドも立たないからだろうか。11月末まで待たせていた「007」もまた更に来年に延びている。そら、2億5000万ドルかけた大作だし、今、無理に封切って感染爆発でも起こしたら元も子もないし、ド赤字をこくだけだ。春まで待つしかないだろう。

 おかげで我らの新作「無頼」は肩身が少し広くなって、来月の12日から映画のコンビニ(シネコン)とは無縁の単館ながら、東京、横浜を皮切りに全国順次公開となった。ここは一つ、お客さんに「007」はしばし忘れてもらって、こっちに足を運んでほしい。ボンドみたいに大英帝国お墨付きの殺し屋みたいに跳んだりはねたりはできない、地べたを這いずり回るのが精いっぱいだったケチな無法者たちの物語だけど、ご高覧、お願いしときます。

 というわけで、自作の話をもう少し許してほしい。ちょうど、8年前の公開作「黄金を抱いて翔べ」では当時の“デジタル画像の潮流に思いっ切り逆らってやれ”と、ほとんどの組が手を付けなかった35ミリのフィルムで撮った。1975年のピンク映画デビュー以来のフィルム仕事もこれが最後になるかと腹をくくって撮ったのだが、劇中、金塊強盗の主人公が過去を回想するイメージ部分だけは35ミリの数倍、キメの粗い16ミリで撮ろうと思い、何度もテスト撮影をして、人間の幼い頃の記憶らしい程よい粗さの画像を求めたのだった。でも、当時はフィルムの品質も現像技術もとても改良されていて、どっちが35か16の画像か見分けられないほど差がなく、苦心惨憺の揚げ句、粗く仕上げたのだった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  2. 2

    清原和博氏が巨人主催イベントに出演決定も…盟友・桑田真澄は球団と冷戦突入で「KK復活」は幻に

  3. 3

    巨人今オフ大補強の本命はソフトB有原航平 オーナー「先発、外野手、クリーンアップ打てる外野手」発言の裏で虎視眈々

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  1. 6

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  2. 7

    高市首相のいらん答弁で中国の怒りエスカレート…トンデモ政権が農水産業生産者と庶民を“見殺し”に

  3. 8

    ナイツ塙が創価学会YouTube登場で話題…氷川きよしや鈴木奈々、加藤綾菜も信仰オープンの背景

  4. 9

    高市首相の台湾有事めぐる国会答弁引き出した立憲議員を“悪玉”にする陰謀論のトンチンカン

  5. 10

    今田美桜「3億円トラブル」報道と11.24スペシャルイベント延期の“点と線”…体調不良説が再燃するウラ