「プロジェクトX」司会の元NHKアナ国井雅比古さんが明かす「スタジオから緊急入院したことも」
看護師さんが車イスを持ってスタジオまで…
「『プロジェクトX』に出演していたとき、狭心症で緊急入院したこともありました。たまたま健診で心電図に異常が見つかり、再診を強く勧められたのに、症状がないので逃げ回っていたら看護師さんが車イスを持って『プロジェクトX』のスタジオまで来て、収録後つかまえられまして。そのまま救急車に乗り、すぐにカテーテル手術を受けました。心臓動脈の流れが悪くなっていて、普通の人の10%しか血液が流れておらず危なかったそうです」
それを機に、1日3、4箱吸っていたたばこをやめた。
「でも酒は好きで、今も毎晩、ビールと芋焼酎の一升瓶を4分の1飲んでいます。胃を切ってたくさん食べられなくても、飲むのは大丈夫なんですよ(笑)」
結婚は東大在学中の20歳のとき。一緒に演劇活動をしていた女性だった。
「高校時代から演劇を始めていて、将来は役者になるのもいいなと思ったこともありましたが、親の大反対を押し切って結婚したので、生活のためにNHKに就職したというわけです(笑)」
現在、51歳の長男、49歳の長女、48歳の次女に恵まれ、孫が2人いる。
都内の戸建てで、夫人と次女の3人暮らしだ。
「現在は主に読書をして過ごしています。『おくのほそ道』を読むのがライフワークで、あとは『万葉集』や夏目漱石全集。それから、図書館で『平家物語』や吉川英治の作品を借りて読んだり。同じものを何度も読んで、『いいなあ』と味わっています」
次女の勧めで、昨年、「おくのほそ道」の朗読をYouTubeで公開した。
「今の世の中、嫌なニュースばかりでしょ。3年前にロシアがウクライナに軍事侵攻したときは、本当に頭にきて『NOTプーチン』と書いたプラカードを首から提げて、1人でロシア大使館の前に抗議に行きました。今はイスラエル大使館に抗議に行きたいところですが、人生の残り時間が少なくなりました。今は少しでも長く、古典の世界に浸っていたい。読んでいると、気持ちが透き通ってくるんですよ」
(取材・文=中野裕子)
▽国井雅比古(くにい・まさひこ) 1949年2月7日、山梨県都留市生まれ。東京大学文学部卒。73年NHK入局。富山、旭川、名古屋を経て98年、東京アナウンス室へ。落ち着いた声と語りで「日曜美術館」「プロジェクトX~挑戦者たち~」「小さな旅」などを担当。