【96分】猛スピードで疾走する新幹線を舞台にした“爆弾人情劇”
主人公は次から次へと崖っぷちに
猛スピードで走る乗り物に爆弾が仕掛けられる映画はこれまで数多く製作されてきた。「新幹線大爆破」(1975年)や「スピード」(94年)。爆弾ではなく、テロリストが旅客機を乗っとる「エグゼクティブ・デシジョン」(96年)など数え上げたらきりがない。
この「96分」の特徴は爆発の恐怖にさらされる列車が2台であることだ。宋が乗る列車とその前を走る列車。ともに時速300キロ近い猛スピードで疾走する。そのどちらも爆弾犯人の魔の手から逃れることができない。
乗客は不安から疑心暗鬼となり、パニックに陥る。さらに宋は3年前の爆弾犯人から執拗な威圧を受ける。それでも列車を止めることは許されない。
彼は犯人から言葉の強迫を受けつつ2台の列車の危難に立ち向かう。そうしながら、心は過去の秘密と闘っている。まさに二重、三重の苦しみ。よく「脚本作りの基本は主人公を追いつめ、苦しめること」と言うが、ここまでやるかとあきれるほど、宋は次から次へと崖っぷちに立たされる。
彼のそばには美しい婚約者がいる。また、一緒に追悼式に向かう母親もいる。彼女たちを守るには自分の命を惜しむわけにはいかない。究極の状況の中に人と人の愛情が湧き上がる。この作品はパニックを舞台にした“爆弾人情劇”と呼んでいいだろう。
爆弾魔に立ち向かう宋は罪悪感を抱え、犯人も悲しみに対峙している。ここにも人情による相克がある。かくして爆弾を抱えた新幹線は烈風の中を突き進んで行くのだった。
(文=森田健司)



















