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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

「安楽死」を希望する患者が診察して30分後には笑顔を…

公開日: 更新日:

 このお話を受け、私はこんな提案をしてみました。

「治療経過から薬の整理をしてみましょう。S―1を内服していて肝臓に転移がきたのだから、S―1はもう効かないと思う。そして、今回はゲムシタビンとアブラキサンの併用で副作用が強かった。2年前に行われたゲムシタビン単独治療では効いている状態のまま手術になった。この時、副作用は出ていません。今回の肝臓への転移はゲムシタビンが効かなくなった結果ではなさそうだから、もしかしたらゲムシタビン単独でも効くかもしれませんよ。やってみますか? いかがですか?」

 私の説明を聞いたMさんはすぐにニコッと笑みを浮かべ、「先生、納得です。やってみます」と返事をしてくれました。なんと、いきなり「安楽死させて」と飛び込んできた患者さんが、30分後には笑顔になって抗がん剤治療を行うことになったのです。

 さらに、治療中に調子が悪くなった時は入院できることを保証し、Mさんはとても安心されたようでした。診察室を後にされる時、Mさんは「いま家族は犬1匹だけです。犬が死ぬ前に自分は死ねないのです。犬と一緒に安楽死させていただくつもりでした」と笑っていました。

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