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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

外出を控えて運動不足になると心臓にとって大きなマイナス

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 外出自粛期間中、会社員の1日の平均歩数は9000歩から約2700歩まで激減していました。高齢者は新型コロナウイルス感染症でハイリスクと言われ、ほとんど外に出ない人も多かったでしょうから、もっと歩数が減っているかもしれません。1日の歩数が6000~7000歩未満の人は、8000~9000歩以上の人よりもサルコペニアになるリスクが2~3倍高くなり、女性で4000歩未満の生活を5年継続して75歳を越えると、80%以上の方がサルコペニア予備群になっているというデータがあります。運動量の低下はサルコペニアにつながるのです。

 サルコペニアは心臓にも悪影響を与えます。サルコペニアの度合いが高い心不全患者は、再入院や死亡率が高くなるという報告がありますし、中等度の心臓弁膜症が重症化してしまうケースもあります。心臓も筋肉だから、筋肉量が減少するサルコペニアによって衰える……というわけではありません。心臓が送り出す血液の“受け皿”である全身の筋肉量が減少してしまうと、心臓疾患そのものの状態は変わっていなくても、表れる症状は悪化してしまうのです。

 また、筋肉には、臓器の働きを維持するために重要な生理活性物質を分泌させる内分泌器官としての役割があり、サルコペニアによってその役割が失われてしまうことで心臓の機能が悪化するという見方もあります。いずれにせよ、サルコペニアで筋肉量が減少すると体全体のバランスが崩れ、心臓にも影響してくるのです。

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