肺<下>胸式&腹式 呼吸強化のための4つの呼吸筋ストレッチ

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 胃や大腸、心臓などの臓器は、人が自分で意識をすることなく自動的に動いている。そんな中にあって、「息を大きく吸ってー、止めてー、吐いてー」と、自分で意識的に動きをコントロールできる臓器は「肺」だけだ。

 なぜ、肺は意識的に深呼吸のような動きができるのか。日本呼吸器学会指導医・専門医で「池袋大谷クリニック」(東京・豊島区)の大谷義夫院長が言う。

「肺には自分で動く仕組みはありません。呼吸は肺の周りにある『呼吸筋』と呼ばれる筋肉の収縮によって行われています。ですから、深呼吸は呼吸筋を意識的に動かすことで行われます。呼吸筋は呼吸に関わる筋肉の総称で、およそ20種類あります。中でも主な呼吸筋は『肋間筋』と『横隔膜』です」

 肋間筋は、肋骨と肋骨の間にある筋肉で、「外肋間筋」と「内肋間筋」がある。外肋間筋が収縮すると、肋骨が引き上げられて肺が収まっているスペース(胸郭)が前後左右に広がるため、肺が大きくなって息が吸い込まれる。内肋間筋が収縮すると、肋骨が押し下げられて胸郭が狭くなるため、息が吐き出される。主に肋間筋を使うこの呼吸を「胸式呼吸」という。

 横隔膜は、肺の下端にあるドーム状の骨格筋で、焼き肉でいうと「ハラミ」の部分になる。横隔膜が収縮すると下に動くので、胸郭が広がって息が吸い込まれる。横隔膜が緩むと上に動き、胸郭が狭くなって息が吐き出される。主に横隔膜を使うこの呼吸を「腹式呼吸」という。

「通常は、肋間筋か横隔膜のどちらかではなく、両方の働きによって呼吸が行われています。胸式呼吸も腹式呼吸も、どちらか一方だけが大切というわけではなく、両方とも必要で、体の状態や一日の時間帯によって無意識のうちに使い分けているのです」

 このような仕組みで呼吸は行われているが、病気ではないのに「呼吸が苦しい」という症状が出る場合がある。大谷院長が経験した症例はこうだ。

 27歳の男性Aさんは「1~2年前から呼吸が苦しい感じがして、深く息が吸えない。苦しくなって、慌てて深呼吸することもある」と来院した。

 Aさんは、たばこは吸わず、酒も付き合い程度。レントゲンや心電図、血液検査、アレルギー検査などをしても異常なし。気道の異常も肺疾患もなし。しかし、肺機能検査をしてみると、実際に肺機能が年相応よりも低下している。

 日常生活を聞いてみると、飲食店で調理の仕事をしていて、常に前かがみの姿勢をしている。仕事以外の時間は、スマホを使っていることが多く、休日も一日中スマホを操作しているという。

 その話を聞いて疑ったのは、常に猫背になっているせいで、しっかり呼吸ができていないこと。そこで治療として、常に「意識して姿勢を正す」「スマホを見るときも良い姿勢で、高い位置で操作する」ことを守ってもらい、併せて「呼吸筋ストレッチ」も毎日続けてもらったという。

 その結果、約4カ月後には呼吸の息苦しさが治まり、肺機能検査の数値も改善されたという。Aさんは病気ではなく、悪い姿勢のために呼吸が浅くなっていることが原因だったわけだ。

 Aさんが実践した呼吸筋ストレッチは、呼吸筋を鍛えて肺機能をアップさせる。

 前かがみの悪い姿勢になりやすいパソコン操作が多いデスクワークの人には、肺のセルフケアになるので4種類のやり方を紹介する。

10回1セットで毎日行う

■背中と胸のストレッチ

①立った姿勢で胸の前で両手を組み、息をゆっくり吐ききる②息を吸いながら背中を丸めて腕を伸ばし、息をゆっくり吐きながら腕と背中を元に戻していく

■呼吸筋のストレッチ

①立った姿勢で両手を頭の後ろで組み、ゆっくり息を吸う②息をゆっくり吐きながら、腕を上に伸ばして伸びをする

■胸壁の呼吸筋のストレッチ

①立った姿勢で両手を後ろで組み、息をゆっくり吸いながら、両肩を前方に閉じていく②息をゆっくり吐きながら、両手を伸ばしたまま上げていき、両肩を斜め後ろ上方に引っ張る

■腹部・体側の呼吸筋のストレッチ

①立った姿勢で片手を頭の後ろに当て、反対側の手は腰に当てて、鼻から息をゆっくり吸う②息を吐きながら、頭に手を当てた側のひじを上げて、体側を伸ばす。息を吐ききったら、手を入れ替えて、反対側の体側も伸ばす

 この4種類のストレッチを10回1セットで、毎日行うと効果的という。

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