著者のコラム一覧
小川誠司仙台ARTクリニック副院長

1978年、兵庫県生まれ。2006年名古屋市立大学医学部を卒業。卒後研修終了後に慶應義塾大学産科婦人科学教室へ入局。2010年慶應義塾大学大学院へ進学。2014年慶應義塾大学産婦人科助教。2019年那須赤十字病院副部長。2020年仙台ARTクリニックに入職。2021年より現職。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。

「不妊検査で異常なし」=「不妊ではない」ということにはならない

公開日: 更新日:

 そもそも、検査で原因がはっきりとしないものを「治す」ことはできません。また、原因が見つかったとしても、卵巣機能が低下している、うまく排卵しない、精子が少ない、といった原因の場合、根本から「治す」ということは実は非常に難しいことなのです。では、不妊治療では何をするのか?

 38歳のB子さんは、1年間自分で妊活に励んできましたが妊娠できず、病院を受診しました。B子さん自身には検査では特に異常がなく、ご主人の精液検査で「精子の運動率が低い」と言われました。そこで人工授精を行い、1回目で妊娠されました。

 この例では、原因である精子自体を治療しているわけではなく、人工授精によって運動率が低い精子を直接子宮内に注入することにより妊娠することができました。つまり、不妊治療の大部分は「治す」ことではなく、低下している機能を「補う」ことにより、うまく妊娠できるようつなげる治療なのです。

 不妊治療では、不妊原因がはっきりしない場合でも段階的に治療方法をステップアップし進めていきます。超音波検査で排卵の時期を推定して性行為の指導を行うタイミング指導から始まり、排卵の時期に合わせて精子を子宮内に注入する人工授精へとステップアップします。それでも妊娠されない場合には、体外受精へと治療を進めます。どのステップから治療を始め、どのくらいの期間で次の治療にステップアップするかは患者さんの状況により異なります。

 最後に、体外受精はもちろん治療ではありますが、卵子をいったん体外へ取り出すことにより、受精、受精卵の発生といった通常では見えない部分が明らかになり、それまでわからなかった不妊原因が明らかになることも少なくありません。

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