著者のコラム一覧
荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【ウエストナイルウイルス感染症】似たウイルスの抗体を利用した薬の研究が進んでいる

公開日: 更新日:

「ウエストナイル熱」や「ウエストナイル脳炎」という病名を聞いたことがあるでしょうか? ウエストナイル熱は、インフルエンザのような症状が表れる比較的軽症の病気です。ほとんどの患者さんは数日から1週間以内で回復します。その原因となるウイルスが脳に感染し、さらに重篤な状態がウエストナイル脳炎です。いずれも、ウエストナイルウイルスが原因で起こる疾患です。

 ウエストナイルウイルスはフラビウイルス属のウイルスで、日本脳炎ウイルスやデングウイルスの仲間です。日本脳炎と同様に蚊が媒介して、ヒトのほか、トリ、ウマなどの動物への感染がわかっています。

 ほとんどの人(約80%)は無症状なのですが、感染した人のうち2割程度がウエストナイル熱を発症すると考えられており、発熱、頭痛、筋肉痛、時に発疹やリンパ節の腫れが見られますが、症状は軽度です。ウエストナイル脳炎になって重症化すると、激しい頭痛、意識障害、痙攣、筋力低下、麻痺などを示し、まれに後遺症が残るケースもあります。

 サル痘を取り上げた前回、同系統のウイルスに免疫を持つことができれば、似ている別のウイルス疾患にも有効であるという「交差免疫」についてお話ししました。ウエストナイルウイルスにおいても、よく似ている日本脳炎ウイルスのワクチンを接種した人から得られる抗体を応用して治療に利用できるのか、研究されています。ただ、現時点では有効なワクチンや特効薬はまだありません。

 アフリカ、中近東、欧州、米州では過去に何度か流行していますが、いまのところ日本では流行したことはありません。ですから、これらの国を訪れる場合には、長袖、長ズボンを着用するなどして蚊に刺されないようにする対策が重要です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁