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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

認知症家族へのイライラが抑えられない…つい怒鳴って自己嫌悪

公開日: 更新日:

 認知症の家族の介護でイライラが抑えられません、時に手をあげそうになります、どうすればいいでしょうか--。こんな相談を受けることは少なくありません。

 13年間、認知症のお母さんと2人で暮らし、昨年、自宅で看取った女性は、当時を思い出してこう言いました。

 ★ ★ ★

 お母ちゃんとずっと二人三脚でやってきたんです。一緒に過ごしたくて、自宅で介護することを選びました。

 そんな大好きなお母ちゃんでも、同じことを何度も聞かれたり、やらないでほしいことを何度もされたりすると、イライラッとして、怒鳴ってしまい、自己嫌悪に陥ってしまいます。本には「怒ってはいけない」「優しく寄り添って」といったことが書かれているけど、期間限定なら優しくできても、毎日のことですから無理です。

 そんな時は、介護経験がある友人、介護中の友人にウワーッと愚痴るんです。ため込まないで吐き出そうね、お互いさまだからね、とライングループでつながっていて、みんなそれぞれ言いたい放題。みんな経験者(経験中)なので、何を言っても責められないし、意見もされないのが安心でした。

 ★ ★ ★

 相手の言動にイライラを覚えるのは、介護に限らず、育児でも、夫婦間のやりとりでも、起こり得ること。思い通りにいかずイライラするのは正常心理です。だから、イライラを抑えようなんてしなくていい。

 一方で、相手にイライラされると、そんなつもりじゃなかったのにこっちもイライラしてしまう経験も、誰もがあるはず。認知症のご家族の場合、介護者のイライラがより顕著に相手のイライラに火をつけてしまい、悪循環に陥りがちです。

 イライラを少しでも減らすために、気持ちを吐き出したり気分転換を図ることは非常に大事です。デイサービスやショートステイを利用して距離を保つ。認知症カフェや介護者の会などに参加するのもいいでしょう。私が、患者さんとの診察でご家族にも同席してもらうのは、ご家族の不満に耳を傾けるためでもあります。ご家族が不満を訴える。それを聞いていた患者さんが不意に「いつもありがとう」と口にする。そんな場面もよくあります。

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