ウオーキングがもたらす心理的健康…ストレスを解消しうつにも効く
19人の男女に自然の豊かな環境でウオーキングしてもらう一方で、別の19人には交通量の多い街道をウオーキングしてもらったもの。わずか90分だったにもかかわらず、ウオーキングの環境の影響に大きな差があったことが報告された。
同じことをいつまでもくよくよ考えたり、自らの欠点や問題点を考え続ける思考プロセスを「抑うつ的反芻」(ルミネーション)と呼ぶ。研究では対象者へのアンケート調査でウオーキングによってルミネーションがどう変化したかを調べた。その一方で、ウオーキング前後に参加者の脳のMRI(磁気共鳴画像法)の検査をすることで、ルミネーションによって活性化する脳の前頭前野の活動を調べたという。
その結果、自然豊かな環境でウオーキングした群は、前頭前野の活性化が抑えられたことがわかった。これは自然豊かな環境でのウオーキングはうつ傾向を軽減できる可能性を示している。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「『運動=体を鍛える=健康』という図式が出来上がっている人は、ハードな運動ほど健康効果が高いと思いがちです。ウオーキングでそれだけ効果があるのなら、ランニングの方がさらに効果が高いはずと考えるかもしれません。しかし、そうとも限りません。確かにランニングはランナーズハイがあるように、精神的な健康に貢献する面もあります。しかし、その一方で膝や足首、腰などを痛めるリスクもあります。また、過度な運動はフリーラジカルを増やしてしまい、身体にとって細胞レベルでの負荷となる可能性もあります。軽い運動であっても長く続けられるという点を考えれば、長く精神的健康を支えるという意味もあわせて、ウオーキングがお勧めだと思います」