95歳までスイスイ歩く「筋肉革命」…サコーメソッドで非介護を保つ

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 2004年に脳梗塞で倒れ、一命を取りとめた長嶋茂雄氏のリハビリを担当し、奇跡の回復と社会復帰に導いた酒向正春氏(ねりま健育会病院院長)。新著「筋肉革命95 何歳からでも実現できる95歳で当たり前に歩いて楽しむ人生を」では、「95歳まで非介護」を実現させる対策が詳しく紹介されている。酒向氏にあらためてポイントを聞いた。

 今の日本では、年齢別の死亡数が最も多いのは、男性88歳、女性92歳です。一方、健康寿命はおおよそで男性73歳、女性76歳です。平均寿命は男性82歳、女性88歳です。この現状を考えると、今後は80歳代では緩やかに就労を継続して、95歳までは介護状態にならない非介護対策が世界に先駆けて必要です。その対策が80歳で60歳代、90歳で70歳代の筋肉を目指す「筋肉革命95」になります。

 筋肉、骨、脳は連関しており、「脳筋連関」があります。筋肉をしっかり鍛えることで骨も強くなります。筋肉と骨を維持して、適度な就労、交流、社会活動や歩行を続けると、脳細胞に快刺激が送られて脳の萎縮や認知機能の低下を防ぐことがわかっています。

 健康寿命を20歳延ばすために、「サコーメソッド」を実践して、脳筋連関を促進することで、95歳以上まで非介護を保ち、気持ちよく楽しく生きていきましょう。

■50歳を超えると、筋肉、骨、脳神経が低下していく

 私たちは50歳の年齢を迎えると、体の変化に気づき始めます。そして、10歳ごとに、筋肉、骨、脳神経が徐々に低下していきます。

 60歳を越えると、心肺機能も低下してきますので、特に体力の低下を実感します。

 70歳を越えると、骨量も骨格筋量も低下し、脳萎縮も進行して、体の動きが鈍くなり、認知機能や末梢神経機能も低下していきます。

下半身の大きな筋肉群を鍛えることが最も大切

 こうした高齢者の体の変化に対応して、介護状態にならないように、私たちは「サコーメソッド」を実践しています。そのポイントは7項目で、①筋力②体力③バランス④関節可動域(柔軟性)⑤認知機能⑥健康医学、そして⑦楽しむことです。

 ①筋力は、高齢になると屈曲筋が優位になり、パーキンソン病のような前傾姿勢、体幹が傾くといった姿勢になりがちです。このため、伸展筋=関節を伸ばす際に働く筋肉を鍛えることが重要です。つまり、大きな筋肉である抗重力筋を鍛えます。特に殿筋群と太ももを鍛えることが重要です。100歳でもヒップアップしたお尻を保てれば、転倒や骨折は防げます。

 ②体力は、有酸素運動を50~60分間は続けることが重要です。週1~2回継続することで維持できます。

 ③バランスは、脊柱起立筋と大腰筋の強化訓練が必要です。下腹部を引き締める効果もあり、転倒予防にもなります。

 ④関節可動域は、大きな関節である股関節、膝関節、脊椎、肩関節、肘関節などを伸ばすことが重要です。放っておくと、知らない間に屈曲して伸びなくなってしまいます。関節可動域を保つと、しなやかな動きで疼痛予防ができます。

 ⑤認知機能は、定期的な楽しい交流や新しい学びが必要です。インストラクターが個人的に心のケアもしてくれるパーソナルジムやデイケアを利用するのが有効です。毎週インストラクターやセラピストらと計画的にコミュニケーションをとることがとても大切です。

 ⑥健康医学は、生活習慣病を予防するために、筋肉と骨と脳の脳筋連関を促進する重要性を本書で学んでください。そして、加齢と上手に付き合い、自分の心身を大切にするケア方法を本書で学んで、ルーティンで行うことが必要です。

 最後の⑦楽しみは、ひとりひとり異なると思います。その人なりに「楽しい」と感じて、気持ちいい暮らしを考えて行うことが大切です。他人を喜ばせるような活動や手伝いは、自分が幸せを実感できるのです。会いたい人がいる暮らしがとても大切です。

 これらのポイントは、サコーメソッドの体づくり運動で脳筋連関を促進して実践できます。快適な体づくりの基本は、ハリのあるお尻と太ももを保つことです。すなわち、下半身の大きな筋肉群を鍛えることが最も大切です。大きな筋肉や全身筋肉の増強は糖尿病を治療し予防もします。また、首や肩のこりや痛みをとるためには、首肩まわりのストレッチと疼痛予防の筋力強化が必要になります。そして、腰痛やお腹ポッコリを改善して、シュッとした体と背筋を保つためには、股関節のストレッチに加えて腹筋と背筋の体幹周囲強化を行います。

 サコーメソッドの体づくり運動は、ウオーミングアップ、ストレッチ運動、筋肉増強トレーニング、クールダウンの4段階があり、それぞれ、新著「筋肉革命95」の中で詳しく解説しています。ウオーミングアップ後に、ストレッチと筋肉増強トレーニングを8種類ずつ行いますが、慣れるまでは4種類ずつでも構いません。基本は、首肩回りを1種類、上半身(体幹)を1種類、下半身2種類で、ストレッチと筋肉増強トレーニングを行うことが大切です。

▽酒向正春(さこう・まさはる) 愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・日本脳神経外科学会・日本脳卒中学会・日本認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)など、近著に「筋肉革命95 何歳からでも実現できる95歳で当たり前に歩いて楽しむ人生を」(日刊現代)がある。


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