病床から見えるさまざまな家族の形…なぜ政府は虚構モデルに執着するのか
ところが政府の役人は、自分たちの都合のいいように「夫婦と子供2人」の「標準世帯」を国民に押しつけます。この「標準世帯」は、大和総研によれば全世帯の5%に満たないとか。絵空事、虚像に他なりません。「夫婦と子供2人」の家族は「希少家族」と呼ぶべきです。
なのに、カルト思想に凝り固まっているのでしょうか、「日本古来の伝統的な家族」などと言い出す政治家がいます。明治政権の富国強兵の土台となった「家長制度」「家庭内奴隷制度」を復活させたいのでしょうか。でも、確かにこのままでは近い将来、この国は滅びそうです。「富国強兵」がんばってください!
40年前、医者になりたての頃、70代の男性患者さんを担当しました。生活保護を受けておられました。手術の後1カ月間、容体が安定せずに死線をさまよう時期がありました。家族は昔いたそうですが、絶縁したとのことです。心配そうに足しげくICUの患者さんを見舞ったのは、同居するやはり70代の男性でした。
2人はどういう関係だったのか、想像の域を超えません。でも、家族だったと言えるでしょう。困窮しながら、支えあって生きてきたのでしょう。患者さんは、いつも枕元に腕時計を大事そうに置いていました。その情景が、鮮明な画像として今でも目に焼き付いています。同居人のお見舞いの甲斐あってか、彼は回復し、元気に退院していきました。この2人の関係は、少なくともなにかポジティブなものを生み出していたように感じました。